焙煎士という仕事

今、僕は、珈琲豆を焙煎して販売する仕事をしている。もう5年目に突入した。

 

ある著名人が「趣味は仕事にしてはいかん。2番目に好きなことを仕事にすればいい。」と本に書いてあった。

 

意味は何となく分かるが、本意はちゃんとわかっていないだろうな。

 

趣味を仕事にしたら楽しいはずだ。

しかし、仕事にするということは、お金になることだ。お金になる趣味はそうそうない。だから、お金にかわるよう、趣味を「お客様」に寄せていかなきゃならない。その時点で「自分の趣味」とは少しずつ離れていく。時にはその趣味が嫌いになってしまう。

 

僕も趣味はいくつかあるが、『珈琲』もその一つだ。でも、一番ではない。一番好きな趣味は、自分に才能がないことがわかっているし、お金になるほどの腕前がないことが確実にわかっているから、本当にただの趣味としている。

 

しかし、珈琲豆の焙煎は奥が深い。

5年目になるのに、まだまだ毎日が修行中という感じだ。

珈琲豆の特徴を把握しながら、その日の温度や湿度、量などでも味が変わってくる。「同じ豆だから同じ焼き方」というわけにはいかない。

 

先日、初めて来た夫婦のお客さんから質問された。

「嫌なことを聞きますが…、こういう仕事は稼いでいけますか?」

 

どうやら、息子さんが珈琲豆焙煎を仕事にしたいそうだ。

 

僕も答えに困ったが、

「お客さんがたくさん来てくれれば稼げます。」と答えた。

・・・当たり前の答えしか言えなかった。

 

当店も、おかげさまで『常連さん』が増えたが、いつまで常連でいてくれるのかはわからない。

『新規客』が増えていかなければならない。

常連さんも、定期的に来店されるが、たくさん豆を買うと、しばらく来なくなる。

珈琲豆は毎日買うものではないから当然のことだ。

 

ただ、常連さんによくいう言葉がある。

「たまには浮気して、他の店でも買ってみてください。」

 

他店と比較してほしいからだ。

それで、他店の方が美味しかったら、その人はそこから他店の豆を買うことになるだろう。

当店の方が美味しかったら、また戻ってくるだろう。

この言葉の裏には僕の自信がある。

それは、他店よりも新鮮な珈琲豆を販売するところだ。

 

『珈琲豆は生鮮食品』とお客さんには言っている。

見た目にはわかりづらいが、ちゃんと管理しないと、黒くなった珈琲豆は日に日に酸化して、味も香りも落ちていき、酸っぱい酸味を出す。痛んでいてもわからないのだ。

当店の珈琲豆は、お客さんの目の前で焙煎するので、逃げも隠れもしない『新鮮な珈琲豆』しか販売しない。

 

仕事としては、毎日、同じような作業をしているようだが、細かい気配りが必要な仕事だ。

その豆に合った焙煎度合を把握し、焼いている間も、豆の状態をサンプリング棒で確認しながら豆の状態を見る。

 

焙煎士は日本中にたくさんいる。

札幌にもたくさんいる。

でも、うちはまだまだ有名じゃない。

もっといい焙煎をする人もたくさんいる。

しかし、うちの店を気に入ってくれて、遠くから買いに来てくれるお客さんもたくさんいる。

遠くまで「送ってください。」と言ってくれるお客さんも増えてきた。

 

自分の趣味の一つだった「珈琲」を仕事にした自分は、これからも毎日焙煎していこう。

他店に負けない部分を前面にだしながら、お客さんの好みに合わせつつ、自分のやりたい方向でやっていきたい。

 

6年目はどんなことを考えているのだろうか?
この「仕事」を続けていられるのだろうか?
まずは今の考え方でやっていこう。

間違っていたらやり直そう。